「東京・下町自転車」 | (江戸川区平井:前編) | |
東京都江戸川区平井はこれといって特色の無いところ、JR総武線の錦糸町・亀戸と新小岩の間に挟まれて、その存在感は僅かです。 しかしながら駅前近くは狭いながらもラーメン店の激戦区であって、他(よそ)では味わえない極め付きの美味しいラーメンに出会えます。 |
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先ずは近くを走る蔵前通りから。この通り沿いにあるのは「らーめん大」と「麺家 五衛門」、そして「本家 大黒屋本舗」の三店舗、いずれ劣らぬ個性を武器に切磋琢磨(せっさたくま)しています。 「らーめん大」は豚の背油ギトギトのラーメンで、ラーメン二郎の系列です。野菜不足の方にはお勧めで、トッピングのモヤシは「多め」、「増し」、さらに「増し増し」までありますが、いずれも料金追加はありません。そうは云っても「増し増し」を頼むのはやや無謀で、未だこれを注文した猛者(もさ)には巡り合ったことがありません。 「増し増し」については一度写真に収めたいという願望があって、食べ切れなかったトッピングは持ち帰ってこようかなどといろいろ策を巡らすも、残念ながら実行に移すまでには至っていません。「増し増し」を頼んだ方がいましたら、この記事に掲載する写真を是非とも提供してほしいと思います。[Mailto:hanadayori@okinawa.zaq.jp] 「五衛門」も、かつては「らーめん大」と同様な背脂ギトギト味でしたが、最近になってコラーゲンたっぷりのこってりスープに方向性を変えた模様です。店の表看板も「関東風とんこつらーめん」から横濱家系を連想させる「麺家 五衛門」に変更し、どんぶりの色も黒から白に変わりました。[かつての五衛門] 蔵前通り沿いには大勝軒の流れを汲む「本家 大黒屋本舗」もあり、いつも行列が出来ています。千葉県松戸の「中華蕎麦 とみ田」プロデュースとまで謳っていて自信と意気込みの程が伺えます。試すべきは濃厚魚介のこってりつけ麺、こちらのつけ汁はあまりに濃厚とろとろで、食券を求める直前に思わず日和(ひよ)って「あっさりつけ麺」を頼んでしまいました。(注:その後、「心の味製麺」としてリニューアル。) しかしながら、ここまで紹介したのは比較的名の通った系列店、城東の下町平井まで、わざわざ時間を割(さ)いて出向いて頂く必要はありません。 |
そんな中、交通費を掛けてでも足を運んで訪ねて欲しいお店は「やなか草」。この店のご主人は葛西の名店「ちばき屋」で長く修行を積んだ方で、店内の装飾やおつまみには「和」の要素が取り入れられ、そこらのラーメン店とは一線を画します。 決まって注文するのは支那そば(醤油)と麦めし。支那そばは、丁寧に灰汁とりされたさっぱり味の豚骨スープに、こしのある縮れ麺がよく絡みます。麦めしは、残ったラーメン出汁を掛けて食べるのがお店のお勧め、塩加減は細かく刻んだザーサイで調整します。これがあまりの美味しさに、ごはん一粒たりとも残すことなくペロリと頂けてしまいます。食後のデザートはレンゲに盛られた杏仁豆腐50円、子供騙(だま)しではありますが、女性客には密かな人気の模様です。 |
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それ以上に人気のお店が平井にありました。お店の名前は「まる政」、やや不便なところにあるので地元の人でもよく知りません。しかしながら「食べログ」では一番人気のお店のようで、これは早速調べてみる必要がありそうです。 お店は平井小学校のすぐ横、閑静な住宅街の一角にありました。「白河ラーメン」の系統だとのこと、「シラカワ」ってあの飛騨高山の??と思い尋ねてみれば福島でした。ちなみに飛騨高山の「シラカワ」は「白川」と書くようで、とんだ知識不足を露呈する結果となってしまいました。 注文したのは中華そば650円、出汁はあっさり鶏ガラの醤油味、やや平たいちじれ麺との相性はばっちりです。毎日食べても飽きの来ない普段使いのラーメンでした。近年、ラーメンの味が濃厚化かつ複雑化している中にあって、こういった昔ながらのラーメンに出会うと、逆にほっとする感覚が生まれます。 しかしながら驚くのは未だ早く、本当に美味しいのは塩ラーメン。チャーシューは鶏のモモ肉で、繊細なスープの風味を壊しません。さらにトッピングとして添えられたアオサ(海苔)からは、かすかに海の香りが漂ってきます。 これは、浅草「与ろゐ屋」(よろいや)の梅しおラーメンをも凌駕(りょうが)するとても上品な出来栄えで、友達に自身をもって紹介できる一品です。 |
前編(今いる所) | 後編 |
(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。) 東京下町を探訪する他の記事(「東京・下町自転車」)や「沖縄花だより」、「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。 |