「東京・下町自転車」(亀戸ラーメン便り) | 中編:塩ラーメン | |
【塩ラーメン】 |
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塩ラーメンと聞いて外すことの出来ないお店は「零や」、京葉道路と明治通りの交差点付近にそのお店はありました。 お勧めは何と云っても塩そば700円。トッピングとして添えられたカリカリ炒めの背脂からは香ばしさと脂の甘さが感じられ、刻み方を微妙に変えた長ねぎとニラからは、素材そのもの香りと風味が漂ってきます。 そして重要なのが岩のり。醤油ラーメンに添えられる板のりは彩(いろど)りと全体の形を整える飾りの要素が大ですが、塩ラーメンの海苔は香りが命、磯にたたずむ雰囲気を盛り上げるのが海苔の大事な役目でありました。 ところで海苔は利益率の高い優等生、しかも乗っけるだけの手間いらずで店主がもっとも喜ぶトッピングなのだそうです。その一方で豚肉は、豚流行性下痢(PED)の流行で卸値価格高騰中、チャーシューは前ほど儲からなくなってきたのが本音と云うことのようでした。 「零や」については坦々麺も自慢と云うことなので、次回は坦々麺+無料のサービスライスと云う組み合わせで挑戦したいと思います。 あまり聞いたことのないメニューが麺工房「武」(たけし)の牛塩ラーメン。塩と云えばあっさりとした鶏だしが一般的ですが、韓国にはコムタンあるいはソルロンタンと云われる牛を煮込んだ美味しいスープが存在し、これがヒントになっているのだろうと思います。 このお店のご主人は麺屋こうじグループでのアルバイト経験が基本になっているそうで、どろどろ濃厚豚骨魚介のつけ麺が本命らしいのですが、ここではあえてこの韓国風牛塩ラーメンを試してみます。 |
図らずも、お店のテレビからはサムスン電子経営不振の報道が流れてきました。低賃金で過酷な労働力を踏み台に、日本の技術を真似て急成長を遂げてきたものの、自ら時間と費用をかけて人材や下請けを育成してこなかったと云ったあたりが本質的な所のようです。 |
そうしている間におばちゃんから「パクチー入れますか?」の問い掛けがあって、条件反射で「はい!」と回答。まもなく待望の牛塩ラーメンがやって来ました。 汁を一口すすってみれば、とてもさっぱりした清湯(ちんたん)スープ、この時点ではパクチーが全体の風味を支配し、ベトナムの田園風景を連想させてくれています。 そして別皿に盛られた茶色の粉はガラムマサラ、数種類の生薬や香辛料がブレンドされたスパイスですが、これを振り掛けた途端にインド風に変わります。もはや頭に浮かぶ風景は、沈む夕日に照らされたガンジス川。 さらに続けてラー油を垂らせば今度は韓国料理に大変身です。一杯で三国分楽しめる、これは正(まさ)にアジア全域をカバーする多国籍ラーメンでありました。 |
前編:豚骨ラーメン | 中編:塩ラーメン(今いる所) | 後編:つけ麺・まぜ麺 | 最終編:醤油ラーメン・その他 | 【周辺マップ】 |
(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。) 東京下町を探訪する他の記事(「東京・下町自転車」)や「沖縄花だより」、「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。 Author:梶原正範 Mailto:hanadayori@okinawa.zaq.jp |